フランスフェア / 阪神百貨店建て替えプロジェクト / 中国の寧波への出店

PROJECT STORY

中国寧波阪急
プロジェクト

阪急阪神百貨店では、次の成長戦略の柱の一つとして、今まで蓄積してきた商業開発および運営のノウハウを駆使し、海外への店舗展開を実施している。現在、中華人民共和国浙江省寧波市における大規模開発プロジェクトの中心地である「寧波中心」プロジェクトに出店を予定している。2018年秋開業を目処に開発が進む当プロジェクトの今を追う。

阪急阪神百貨店では、次の成長戦略の柱の一つとして、今まで蓄積してきた商業開発および運営のノウハウを駆使し、海外への店舗展開を実施している。現在、中華人民共和国浙江省寧波市における大規模開発プロジェクトの中心地である「寧波中心」プロジェクトに出店を予定している。2018年秋開業を目処に開発が進む当プロジェクトの今を追う。

鈴木 健三
寧波阪急準備室 MD統括部
婦人服 兼 ラグジュアリーMD部長
加藤 清久

2001年入社。阪急うめだ本店の服飾雑貨、千里阪急の婦人服・服飾売場を経験し、商品部のバイヤーに。婦人服、ラグジュアリーを担当してきた。2014年に商品部の婦人服部長となり、2015年より現職。学生時代はテニス部に所属。今なお後輩との交流が続いているという。

寧波阪急準備室発足。メンバーの怒涛の日々が始まった

寧波阪急準備室発足。
メンバーの怒涛の
日々が始まった

2015年、春。加藤のもとに一通のメールが届く。内容は突然社長の集合があるとの旨。何のことかわからず、とにかく会議室に入ると、そこには紳士服や服飾、子供服など各カテゴリーの責任者クラスの錚錚たるメンバーが集められていた。そこで、トップから発せられた一言に、加藤は耳を疑った。
「皆さんが4月から正式に立ち上がる寧波阪急準備室のプロジェクトチームのメンバーです」。
加藤は心の中で、「まさか自分が…」と思いながらも、説明を聞いた。「プロジェクトへの参加に白羽の矢があてられた」、「社運をかけたプロジェクトに大抜擢」などと美辞麗句を飾る間もなく、説明会から一週間後、会議に参加した全員で中国へ飛び立ち、寧波の土地を踏む。メンバーたちの怒涛の日々が幕を開けた。パリやミラノへはバイヤー時代によく出張していた加藤であったが、中国の地は未開拓だ。
「とにかく人が多く、ショッピングモールはどこも桁違いの規模。道路の渋滞やクラクションの鳴り響く音、あまりのけたたましさに衝撃を受けましたね。エネルギッシュで活気がある街の雰囲気など、とにかく中国という国がどのような国なのかをまずは知ることができました」。
この後、加藤は毎月、中国へと飛び立つことになる。出店先である寧波はもとより、北京、天津、南京、蘇州、杭州、成都、広州、武漢、さらにはアジア圏にまで足を広げ、バンコク、ドバイ、香港、ソウル…へと、ショッピングモールと名の付く店舗をくまなく回った。
「商業施設の実情を視察し、寧波阪急オープンを見据えて、どのようなことをすれば、目新しさをアピールできるかを調査して回っていました」。

コンセプト作成、ブランド選定世界中を飛び回る

コンセプト作成、
ブランド選定世界中を
飛び回る

カテゴリーに関わらずメンバー全員で、とにかく実際に足を運び他店視察に奔走した。目的は、中国初出店となる寧波阪急の魅力的なコンセプトを導き出すことであった。メンバーの合言葉は「目・鼻・口を探しに行こう」。意図は、「顔」つまりコンセプトの「アウトライン」を描くにあたって、どんな些細なことも何一つ見逃さぬよう注視した。
「発見は3つありました。1つ目は飲食の重要度。2つ目は品揃え・もしくはブランド力。3つ目は、エンターテイメント空間。そして、その3つに付け加えて、中国にはサービスという概念がないこと。日本で盛んに言われている『おもてなし』という概念も、接客の際の笑顔ですら皆無でした(笑)」。
偶然にも「目・鼻・口」の3つと同じく、中国での地域一番店にとって必要な3つの要素と、中国にはない阪急阪神百貨店が最も得意とする概念が見つかった。「アウトライン」は決まった。延床面積にして約16万㎡。阪急うめだ本店の約2倍を擁する巨大商業施設の全貌が見えてきた。
コンセプト作成と並行して、加藤は出店を依頼するブランド選定と交渉実務に取り掛かった。
「担当のラグジュアリーに関しては、トップに同行し、パリ、ロンドン、NY、ミラノをはじめ、世界中を飛び回っています」。
世界を代表するラグジュアリーブランドにとって、巨大プロジェクトへの出店要請は引く手あまたの状況であり、寧波という浙江省の中でも2番目の都市への優先度は低くなる。そうした逆境の中、世界的ブランドの本社はもちろん、アジアのヘッドクウォーターや中国にあるヘッドオフィスの責任者のもとに駆けつけては、粘り強い交渉が続く。
「コンセプトづくりとブランド選定・交渉が同時進行したため、月の出張は平均して3回ぐらい。毎週どこか海外にいて、社内で行方不明扱いにされたこともありました(笑)」。

海外での本格的な初出店地域一番店を目指し、大奮闘

海外での本格的な
初出店地域一番店を目指し、
大奮闘

ジャパンブランド、中国女性が好きな韓流ブランド、最先端のトレンドである欧米ブランド、地元で有名な中国のローカルブランドや中国全土に展開しているドメスティックブランドを選定しては、世界中に広がる交渉先やブランドのパートナー企業、展示会などに足繁く通う。
「現代の中国女性は、SNSで情報を得たり、海外へ旅行、留学したりしているので、世界のトレンドには敏感です。そうした新しい感性を持つ若い世代の女性たちにどれだけ多くの選択肢を提供できるかが鍵になります」。
幸か不幸か、現在寧波には、加藤が模索中のブランド数を誇る婦人服売場を持つ店舗は存在しない。だからこそ、目指すは寧波で一番店になること。地域のお客様のニーズを全て満たそうと、加藤だけでなく全メンバーの思いに「妥協」という文字はない。
「これまで当社は、コンサルティングの立場で海外への出店を手がけてきましたが、今回の寧波のプロジェクトは出資を含め、海外で本格的に取り組む初めての百貨店になります。それだけに、失敗は許されないことはもちろんですが、プロジェクトメンバー全員で、必ずこの事業を成功に導き、中国国内はもとよりアジア全域における阪急阪神ブランドの構築に貢献していきたいですね」。

寧波出店のその先へ、未来に向けた加藤の思い

寧波出店のその先へ、
未来に向けた加藤の思い

多忙を極める加藤だが、2018年の寧波阪急オープンのその先をすでに彼は見据えている。海外における阪急阪神ブランド構築の先にある、未来に向けたグローバル展開のあり方そのものについてだ。
「まずは、阪急阪神百貨店のMDの成功事例を広げることで、世界中で展開されている大規模商業施設開発に当社が積極的に関与できる環境を築くことが大切だと考えています」。
こうした考えは、海外の様々なビジネスパートナーと商談していくうちに芽生えたものなのだという。寧波阪急を一店舗作って終わりではない。その先にあるアジア市場を見渡しても、グローバルの小売市場に参入している競合他社は数限りなくある。競合先は、日本の小売業だけではない。世界が相手だ。
「グローバルなビジネス環境がいかに熾烈なものであるかを痛感することができました。だからこそ、自分たちが強みとする『情報の発信力』や『感性』といった武器を最大限に活かして、並み居る競合に打ち勝つ力をさらに養わなければならないと感じています」。
そのためには、従来のやり方に固執することなく自由な発想で、グローバルに通じる阪急阪神百貨店独自の方法を確立しなければならないと加藤は力説する。
寧波阪急は、まさに阪急阪神百貨店の未来に向けたフラッグシップなのだ。